サムスンが腕時計型タッチスクリーンケータイ「Watchphone S9110」開発
腕時計に電話の機能を詰め込む――。そんなちょっと近未来的な発想の製品が実際に形となったのは、1990年代後半のことだ。1996年にはNTTが腕時計型のPHSを開発し、1998年の長野オリンピックでは会場係員が実際に腕時計型のPHSを使用。2003年にはNTTドコモが腕時計型PHS 「WRISTOMO」の一般販売に踏み切り、2006年にはアサヒビールの景品として、ウィルコムのW-SIMを使うと腕時計型PHSになる「未来型スーパーワンセグ TV Watch」が登場したこともあった。しかし、いずれも一時的に話題になるのみで、一般化も定着もしないまま、10年以上の月日が流れ現在に至っている。
腕時計型のケータイおよびPHSは、「今の時代に腕時計型である必要があるのか」というそもそもの疑問や、小さい画面での操作のしにくさ、本体が小さいゆえのバッテリ持続時間の短さ、そして腕時計に向かって通話をする恥ずかしさなど、問題点や解決するべき課題が山積。“ケータイの画面は大きく、高機能に”の流れとなった日本では次第に新規開発の噂も途絶えはじめ、今では近未来的どころか、逆に過去の遺物といった印象を抱く人も少なくない。
しかし、そんな腕時計型のケータイ開発に、今も取り組んでいるのが韓国のサムスンだ。同社は10年前の1999年に世界初の腕時計型ケータイ「SPH- WP10」を発表して話題をさらったが、7月22日に、同じコンセプトの新機種として、現在の最新技術や機能を詰め込んだ「Watchphone S9110」を発表した。
「Watchphone S9110」は現在のケータイのトレンドであるタッチスクリーンを採用。サイズは縦57.5ミリ×横41.1ミリ×厚さ11.98ミリしかなく、重量は 91グラムとコンパクトで、「世界最薄のウォッチフォン」を謳う。スペックは1.76型液晶(176×220ピクセル)、MP3再生機能、内蔵メモリ 40MB、Outlookメールのチェック機能、Bluetooth、音声認識機能、スピーカーホン通話などを備えている。
実用性はともかく、かつて子ども時代にSF作品などに心を躍らせた世代なら、きっと興味を抱かずにはいられない腕時計型ケータイ。「Watchphone S9110」はGPRSネットワーク向けの製品のため日本で発売されることはまずないが、こうした個性的な端末がリリースされる環境をうらやましく感じる人は、意外と多いかもしれない。