高卒女性は中卒・大卒よりも脳卒中にかかりにくい? 厚労省が2万人を調査
近年、さまざまな研究によって生活習慣や環境と病気の関係が明らかにされている。その中で、欧米では学歴(教育歴)が低い人は高い人に比べて心臓病や脳卒中にかかるリスクが高いと報告されているが、厚生労働省研究班(主任研究者=津金昌一郎・国立がんセンター予防研究部長)が2万人を対象とした調査を行ったところ、高校卒の女性は中学卒や大学卒の女性に比べ、くも膜下出血や脳梗塞などの脳卒中にかかるリスクが低いことが分かった。米医学誌ストロークのウェブ版のほか、同研究(JPHC研究)の公式サイトで発表されている。
欧米おいて、教育歴は喫煙、飲酒、高血圧などとともに心臓病や脳卒中の要因として挙げられている。しかし、日本では教育歴とこうした病気にかかるリスクの関連を調べた報告は限られており、今回の調査が初めてだという。
調査は、1990年に岩手、秋田、長野、沖縄の4県に住む40~59歳の女性2万人を対象として開始し、02年までの約12年間を追跡した。対象者の内訳は、中学卒が54.8%、高校卒が34.7%、短大・大学・専門学校卒が10.5%だった。
約12年間の追跡期間中に脳卒中を発症したのは451人で、高校卒群と比べて中学卒群が約1.6倍、高学歴群が約1.4倍高いことが判明した。また、中学卒群は日常の運動量が少なく、肥満や高血圧が多いという特徴があったという。一方、心臓病(虚血性心疾患)の発症については関連が確認できなかった。欧米の研究とは多少異なる結果となったが、同研究班は「日本においても欧米のように脳卒中発症リスクに教育歴による差の存在が改めて示された」としている。
同調査では就業状態別でも検討しており、高校卒群は就業の有無にかかわらずリスクは変わらなかったが、それに比べて働いている中学卒群は1.46倍、働いていない中学卒群は2.21倍で、働いている高学歴群も1.51倍という結果が出た。一方、働いている高学歴群の家庭における役割が「2つ以上」(2人以上と同居)の場合、「1つ」(1人と同居)に比べて脳卒中にかかるリスクが半分以下になっている。働く高学歴女性は、家庭における役割が多いことでリスクが軽減される可能性が考えられるという。
教育歴、社会的役割と循環器疾患発症リスクとの関連(JPHC研究公式サイト)